VOC(揮発性有機化合物)とは?

健康住宅を見える化する「VOC検査」

VOC揮発性有機化合物)とは、いま社会問題となっている「シックハウス症候群」の原因の1つとされている有害物質で、正式名称『Volatile organic compound』の頭文字をとって「VOC」と呼ばれています。

主に塗料や接着剤、洗剤、印刷インクやガソリンなどに含まれる有機化合物の総称で、その種類はおよそ200種類にもおよぶと言われています。

身近に使われているVOC

まずは、私たちのごく身近に存在する有害物質をご紹介します。

・ホルムアルデヒド、トルエン、キシレンなど…合板や防腐剤、壁紙用の接着剤

・クロルピリホス…シロアリ駆除剤

・パラジクロロベンゼン…芳香剤や防虫剤

・スチレン…ポリスチレン樹脂などを使った断熱材

 

これらは、ごく一部です。ほかにも多くのものに、使用されていることがあります。

VOCの主な特徴

・揮発性があり、大気中で気体となる性質がある

・特有のニオイがある

・引火性の強いものもある

 

目に見えないものですが、意外と身近なところで使われていることに驚く方も多いですよね。

密閉した室内でこれらの有害物質を過剰に吸い込むと、吐き気や頭痛、倦怠感などの体調不良を引き起こすことがあります。

VOCがもたらす健康被害とは?

健康住宅を見える化する「VOC検査」

住宅から発せられるVOCによる健康被害は、以下のようなものが挙げられます。

引越しをしてから体調がすぐれないなど、思い当たることがあれば、もしかしたらVOCによる健康被害かもしれませんよ。

シックハウス症候群

シックハウス症候群とは、その名の通り、住宅の室内環境が原因による健康被害のことを言います。

 

~シックハウス症候群の主な原因~

・化学的要因(VOC)

・生物的要因(カビやダニなど)

・物理的要因(温度、湿度、気流など)

ほかにも、タバコの煙、黄砂などによっても引き起こされます。

 

~シックハウス症候群の主な症状~

・引っ越した途端、頭痛やめまいが起こる

・体中に発疹が出る

・目がチカチカする、涙目になる

・のどが乾燥する

など。

これらシックハウス症候群は、人によって感じ方が異なります。

個人差が非常に大きいので、敏感に感じる人と、全く感じない人がいます。

 

よく間違われやすいのは、このあとご紹介する「化学物質過敏症」

症状は似ていますが、継続して症状が出る化学物質過敏症とは異なり、シックハウス症候群は、原因となる住宅を離れると、その症状は落ち着くと言われています。

化学物質過敏症

化学物質過敏症とは、過去に大量の化学物質を摂取したり、継続的に微量の化学物質を摂取したりしたことで起こるものです。

 

~化学物質過敏症の主な原因~

・柔軟剤や洗剤

・香水や芳香剤

・接着剤、塗料、ワックス

・虫よけスプレー、防虫剤

など。

 

~化学物質過敏症の主な症状~

・鼻や目、喉などの刺激症状

・めまいや頭痛

・吐き気、疲労感

・呼吸困難、発汗

・発疹

など。

 

化学物質過敏症は、一旦発症してしまうと、ごく微量の化学物質を摂取しただけでも過敏に反応してしまうので、症状が重い人だと普通の生活を送ることも困難になってしまいます。

住宅におけるVOCによる健康被害の原因は?

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シックハウス症候群や化学物質過敏症などは、住宅から発せられる化学物質によって室内の空気が汚染されることで起こります。

安全・安心な暮らしをするための住宅であるにもかかわらず、なぜこのようなVOCによる健康被害が起こってしまうのでしょうか?

原因1.住宅の気密性が高まったから

ひと昔前の住宅は、あまり気密性が高くなかったので、家中の窓を閉め切っていたとしても、隙間風が通り、自然と換気ができていました。

しかし、近年人気の「高気密高断熱」の住宅では、密閉度が高いため、意識的に換気を行わないと空気の循環がされにくくなってしまったのです。

これにより、室内に充満するVOCの濃度が高くなり、私たちの体に悪影響を及ぼすようになったと言われています。

現在では、建築基準法が改正され、「24時間換気システム」の設置が義務付けられました。

そのため、気密性の高い住宅でもVOCによる健康被害のリスクは軽減されたと言われています。

とはいえ、普段の生活においても意識的にVOC対策を行うことが大切です。

原因2.有害な化学物質に対する規制が遅れているから

シックハウス症候群など様々な有害化学物質による健康被害が拡大したことをきっかけに、2003年7月に建築基準法が改正されました。

これにより、住宅に使用する建材について規制が強化されました。

しかし、厚生労働省が定めた有害な化学物質は13種類もあるにもかかわらず、実際に規制されたのは、ホルムアルデヒドとクロルピリホスのたった2種類だけ…。

そのため、今の法律では、完全に有害な物質を住宅建材から排除するということはできていないのが現実です。

VOCなどによる健康被害を減らすための対策は?

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これまで述べてきたように、まだまだ建材に使用される有害化学物質に対する規制は完全ではないのが現実です。

では一体、私たちはどのようにしてVOCなどによる健康被害のリスクを減らしていけばよいのでしょうか?

対策①VOC測定を実施する

住宅の室内におけるVOCの発散量を測定するというのも、VOC対策の1つです。

現時点では、法律によって住宅のVOC測定が義務付けられているわけではないため、必ずしもすべてのハウスメーカーや工務店で実施しているとは限りません。

より安心な住まいのためには、住宅を建てる際に、VOC測定を実施している業者かどうかも、建築会社選びの1つの基準として考えてみるといいでしょう。

対策②住宅性能表示制度を参考にする

2000年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく「住宅性能表示制度」。

様々な指標に基づいて住宅を評価するものですが、その中の項目に「シックハウス対策」があり、換気設備やホルムアルデヒドが含まれている建材の使用状況について第三者機関が評価します。

この結果が良いからと言って必ずしも安心安全な住宅とは言い切れませんが、1つの指標として、参考にするといいと思います。

対策③家具やカーテン選びに注意する

VOCは、建材だけでなく家具やカーテン、絨毯などにも含まれている可能性があります。

先述したVOC測定は、一般的に入居前に実施しますので、測定時はVOC濃度が低くても、入居後に購入した家具の影響でVOC濃度が高まることもあるのです。

新居に使用する家具やカーテンなどを新たに購入する際は、これらの有害物質が含まれていないかどうか、確認して選ぶといいかもしれませんね。

最近では、家具に使われる合板や接着剤などに有害物質が含まれていないことを示す「室内環境配慮マーク」というものがあります。

家具選びの際は、このようなマークをチェックして選ぶというのも1つでしょう

対策④換気を十分に行う

入居前から入居後1ヶ月くらいは、特に重点的に換気を行いましょう。

1~2時間に1回の換気をするのがおすすめです。

開けられる窓や扉は開放し、キッチンやトイレ、お風呂場などの換気扇も回します。

また、「24時間換気」の設備は常時運転しておくようにしましょう。

家づくりの際に、風が通りやすい窓の配置にすると、効率よく換気することができますよ。

対策⑤化学物質を含まない建材を使用する

新築住宅を建てる場合は、なるべく化学物質を含まない自然素材の建材を使用することも対策の1つです。

たとえば、ビニールクロスではなく、漆喰壁にしたり、フローリングは合板ではなく無垢材の床を使用したりします。

ただし、このような自然素材を使った家づくりであっても、完全にシックハウス症候群を予防できるわけではありません。

これまでご紹介したように、VOC測定を実施する・換気を十分に行うなども必要です。

VOC対策をしっかりして安心な暮らしを!

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VOCというのは、建材以外にも様々な場面で使用されているため、知らず知らずのうちに摂取してしまっていることもあります。

VOCによる健康被害から家族を守るためには、正しい知識を身につけることが大切ですね。

私たち無添加計画の家づくりでは、全棟VOC測定を実施しています。

あくまでも1つの目安ではありますが、VOC対策への取り組みをしっかり行うことが、お施主様の安心感につながると考えています。

理想の家というのは、人によって様々ですが、家族が安心して暮らせるということが最も大事なこと。

今回ご紹介したようなVOCについても理解を深め、長期にわたって住み続けることのできる家づくりを一緒に目指していきましょう。