交通事故死より多いヒートショック

ヒートショックは寒い家で起こる!家族の健康と幸せのためにできる4つの対策

日本人の死因の3割は「がん」ですが、その次に多いのが心疾患や脳血管疾患などの病気と言われています。

このような心疾患や脳血管疾患を引き起こす原因となるのが、今回詳しく解説する「ヒートショック」なんです。

 

ヒートショックとは、暖かい部屋から突然寒い部屋へ行くことにより、急激な血圧の変化がもたらされることで起こる現象。

心臓に負担がかかり、心筋梗塞や脳卒中などの病気を引き起こすことがあるのです。

このヒートショックが原因で亡くなる人は、なんと年間19,000人と言われており、交通事故で亡くなる人よりもはるかに多いことがわかっています。

 

ヒートショックは寒い家で起こる!家族の健康と幸せのためにできる4つの対策

それなのに、日本ではヒートショック対策は一切されていません。

交通事故防止のための法整備や交通安全運動は頻繁にされるのに、ヒートショック対策はされないまま。

つまり、私たち自身がヒートショックに対する策を講じなければ、大切な家族を守ることができないのです。

今回は、そんなヒートショックが起こるメカニズムから予防策についてご紹介します。

ヒートショックが起こるメカニズム

ヒートショックは寒い家で起こる!家族の健康と幸せのためにできる4つの対策

私たちの体に大きな影響を及ぼすヒートショック。

一体どのような状況下で起こりやすいのでしょうか。

ここではヒートショックが起こるメカニズムについて見ていきましょう。

【ヒートショックが起こりやすい時期】

ヒートショックは寒い家で起こる!家族の健康と幸せのためにできる4つの対策

上記は、心疾患、脳血管疾患、溺死・溺水のそれぞれの月別死亡数を表したグラフです。

ご覧の通りどの死亡数も5~9月は少ないのですが、11~3月にかけて、つまり寒い時期は死亡数が多いことが分かります。

 

このグラフで見る心疾患や脳血管疾患などの要因すべてがヒートショックであるとは言い切れませんが、気温が低くなる時期と言うのは心臓に負担がかかりやすいので注意した方が良いと言えそうですね。

【ヒートショックが起こりやすい場所】

ヒートショックが引き起こされるのは、冒頭でもご紹介した通り血圧の急激な変化により心臓に大きな負荷がかかるから。

そしてこのような気温の変化による血圧の急上昇・急降下というのは8割が屋内で起こると言われています。

なぜ寒い屋外より、暖かな屋内で起こるかというと、それは屋内だと「薄着」になるからです。

気温が低い日に外出する際は、コートやマフラー、手袋などをして万全な状態で出歩きますが、家の中だとどうしても薄着になってしまいますよね。

特にトイレや脱衣所、お風呂などは衣服を脱ぐことも多いですから寒さを感じやすいわけです。

さらにこれらの場所は、主に家の北側に位置することが多く、日が当たらないため一年中寒さを感じやすい場所ですよね。

 

また、寝室も同じように家の北側に位置することが多く、パジャマなど薄着でいることが多いため、温かな布団から出たときとの温度差を感じ、ヒートショックが起こりやすいと考えられています。

 

日本の家は寒い!?ヒートショックが起こる危険は95%

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これまでご紹介したように、ヒートショックというのは屋内で発生することがほとんど。

つまり、家が寒い=断熱性能が低いからヒートショックが起こってしまうのです。

たとえば、室温10℃以下の寒い部屋で寝ている場合。

吸う空気が冷たければ内臓も冷やされてしまうので、気づかぬうちに体温が35度以下まで下がってしまうことがあります。

こうなると突然死するケースもあり、大変危険です。

 

日本の既存住宅のおよそ95%は無断熱住宅と言われていますから、このような突然死のケースも決して他人事ではないのです。

家が寒いから病気にかかるなんて考えもしなかった…という人もいるかもしれませんね。

【日本と海外の住宅事情の違いとは】

日本は先進国にもかかわらず、住宅事情においては諸外国と比べて大きく後退しています。

日本の住宅環境は、「暑い」「寒い」「結露」「カビ」が当たり前のようなものですが、欧米諸国の場合、以下のように法律によって住宅環境の整備がしっかりされているのです。

 

◎アメリカの場合…全米50州のうち24州で断熱性が低いアルミサッシの使用が禁止されている

 

◎イギリスの場合…19℃以下は健康リスクが現れるとし、寒い家の危険性を明確に指摘。

理想は室温21℃以上に保つようにと室温規制を設けている

 

◎ドイツの場合…室温19℃以下では「基本的人権」が損なわれるとし、賃貸の場合は借主から一方的に契約解除ができたり賃料減額の請求ができたりする

 

【日本の住宅に室温規制がない理由】

日本はこれだけ社会が発達しているにもかかわらず、なぜ欧米諸国のように室温規制がされていないのでしょうか。

それは日本特有の理由があります。

 

1つは、高度経済成長期を迎えたあたりに起こった深刻な「住宅不足」が関係してます。

できるだけ早く多くの住宅を建てなければならなかったことから、住宅の性能には目を向けず、「質より量」を優先してきたからです。

 

そしてもう1つは、地震大国日本らしく、住宅の耐震性や防火性に重きをおくようになったから。

これにより、気密性や断熱性という部分にはあまりフォーカスされてこなかったのかもしれませんね。

 

ヒートショックから家族を守るメリット

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欧米諸国のように、日本も寒い家から暖かい家に住むことができれば、ヒートショックから家族を守ることができますよね。

しかし、断熱性気密性を高めるということは、それだけ費用もかかります。

お金をかけてリフォームしたり建て替えをしたりするメリットは本当にあるのでしょうか?

 

【メリット①手術や入院費などの金銭的負担を大幅に軽減できる】

もしヒートショックが原因で脳梗塞になった場合、手術費用や入院費用はいくらかかると思いますか?

一般的には、手術費用はおよそ257万円と言われており、そのうち自己負担は77万円、国の負担は180万円と言われています。

 

もちろんそれだけではありません。

脳血管疾患を引き起こした人のうち、後遺症が残る確率は60%と言われていますから、これまでのように元気に暮らすことができないケースもあるのです。

 

たとえば「要介護5」の認定を受けた場合は、以下のような金額がかかります。

◎介護サービス費用:最大36,000円/月(自己負担額)

◎往診費・その他医療費:12,000円/月

◎おむつや衣類の諸費用:10,000円/月

◎ショートステイ費用:30,000円(8日間利用した場合)

これだけ見ても、年間で88,000円の費用がかかるわけです。

 

一般的に、脳血管疾患後は平均7.5年生きると言われていますから、単純に計算しても88,000円×7.5年=792万円の金銭負担になるということ。

これに手術費用自己負担分77万円をプラスすると、なんと869万円もの費用がかかることになるのですから、できる限り脳梗塞などの病気にかからないことに越したことはないでしょう。

断熱気密改修をした方が、どう考えてもお得というわけですね。

 

【メリット②介護時期を遅らせることができる】

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人は、寒さを感じると血圧が上昇し、体を温めようとします。

そして暑さを感じると体温を下げようと血圧が低くなります。

この落差が大きければ大きいほどヒートショックが引き起こされるわけですが、このような状況が起こりやすいのが、先述したような「脱衣所やお風呂場、トイレ」といった場所。

 

脱衣室の温度がたった2℃上昇するだけでも介護に必要な期間が4年先に延ばすことができるというデータもあるくらいです。

先ほどもご紹介したように、要介護認定を受けた家族がいるということは、金銭的にも精神的にも負担が大きいですよね。

これだけでも断熱改修をする価値は十分にあると考えられます。

ヒートショックを防ぐためにできること

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ヒートショックを防ぐ家づくりができれば、医療費の負担や精神的負担を大幅に削減することができ、家族みんなが元気で長生きすることができます。

では具体的に、どのような家づくりをしたらヒートショックを防ぐことができるでしょうか。

ヒートショック対策としてやるべきことを以下のようにまとめました。

【予防策①窓の高断熱化】

まずは窓の性能を高めましょう。

日本でよく使われているアルミサッシは断熱性気密性が低いため、熱を通しにくい「樹脂窓」がおすすめです。

樹脂窓は日本ではまだ普及率が低いですが、北欧北米など寒さが厳しい地域では当たり前のように使われているんですよ。

 

窓の高断熱化の費用は、リビング窓の場合15万円程度、寝室なら10万円程度の予算が必要です。

窓の断熱性気密性を高めるだけでも冬の快適さが大きく変わるのでぜひ検討してくださいね。

【予防策②床断熱の補強】

一般的な合板フローリングの床材と比べ、無垢材を使用したフローリングの方が、断熱性が高いため冬でも裸足で歩くことができます。

床暖房を設置する費用はとても高額ですし、使用時には電気代もかかりますよね。

 

無垢フローリングなら、電気を使わなくても一年中快適な温度が保たれるので、地球環境にも家計にもやさしいのです。

さらに調湿効果も抜群ですから、湿気の多い梅雨時期もサラッと快適に過ごせますよ。

【予防策③ユニットバス化する】

日本の古い住宅でよく見られる、床がタイルの「在来浴室」は、床がヒンヤリ冷たく、寒さを感じますよね。

さらにガラスのルーバー窓がある浴室であれば、気密断熱ともに非常に低いため、いくらお風呂に浸かってもなかなか全身まで温めることができません。

 

お風呂の湯温は41℃以下が理想ですが、このような寒い浴室だと湯温を上げてしまいがちです。

そうすると、ヒートショックのリスクがどんどん上昇していきます。

 

ですから、ヒートショックによって体調を崩さないためにもお風呂をユニットバス化することがおすすめです。

ユニットバス工事をするにあたっては、80~120万円以上かかるので窓や床の断熱改修に比べると高額な費用がかかってしまいますが、家族の健康を守れると考えれば安いものかもしれません。

【予防策④天井断熱の補強】

寒さ対策としてだけでなく暑さ対策としてもおすすめなのが天井断熱の補強です。

これにより一年中室温が快適に保たれることでしょう。

費用はおよそ20万円~。

これだけで暮らしやすさが変わりますから、床断熱・窓断熱と併せてぜひ検討してくださいね。

ヒートショック対策をした家づくりを

ヒートショックは寒い家で起こる!家族の健康と幸せのためにできる4つの対策

ヒートショックで健康を害する恐れというのは、今回ご紹介したように実はとても身近なこと。

人生100年時代と言われている今だからこそ、少しでも長く健康に暮らすことが家族の幸せにもつながっていくでしょう。

 

壊れていないから、まだ使えるから…となかなか断熱改修に踏み出せない家庭も多いと思いますが、ヒートショックの恐ろしさを正しく理解し、暖かい家で快適に暮らすことを考えてみてください。

 

私たち無添加計画でも、断熱性気密性を考えた家づくりを推奨しています。

断熱性気密性に富んだ家づくりは、今回ご紹介したようなヒートショックを予防するだけでなく、カビ・ダニを防ぐことにもなり、建物の劣化を防いでくれるメリットもあります。

せっかく家を建てるのであれば、家族みんながより快適で安心できる住まいを手に入れてくださいね。